概 要
昭和100年、また本年8月は戦後80年の節目の年に例えられる2025年も残すところ数か月となりました。その間、国内政治情勢としては石破政権が昨年の衆議院選挙に続き、7月の参議院選挙でも大敗を喫して過半数割れに追い込まれたことを受け、衆参両院ともに「少数与党」となり、また、内閣支持率が高まりつつある中にあって、自民党内から総裁選前倒しの動きが強まったことにより、9月7日には石破総理大臣は辞任を表明し、新たな自民党総裁を選出すべく国会議員の投票を10月4日に行うことになりました。一方、野党においては立憲民主党をはじめとする既成政党も政権批判の受け皿となることができず、国民民主党、参政党といった新興野党が躍進するなど、欧州同様に政党乱立による多党化の時代を迎えており、自公の枠組みで政権を運営することは以前にもまして厳しいものとなっているため、連立の枠組みの見直しを含め、日本の政党政治は大きな曲がり角に来ていると言わなければなりません。また、経済情勢については、7月下旬の日米関税合意以降、8月12日には日経平均株価がバブル期の高値を突破し、その後も日米両国で景気が堅調だとする見方から9月9日に一時、4万4000円を初めて上回るなど現在のところ4万円台に定着する様相を見せています。しかしながら、米国経済とFRBの金融政策の動向や日米関税の行方、日銀による利上げ再開された場合での円高の進行、政治空白が1カ月近く続くことによる物価高対策等政策の遅れも懸念されるところであります。
一方、米国においては7月の雇用統計ではこの3カ月に大きく減速したことが明らかになるなど関税措置が雇用市場にも影響を及ぼしているとの見方も出ているほか、その影響で今後インフレ率が一段と上昇するリスクもあり、FRBが9月に行われる金融政策決定会合において利下げに踏み切るとの見方もある中、米国の金融政策についても一層の注意が必要であり、あわせて7月に連邦議会において大規模な税制・歳出法案「一つの大きくて美しい法案」が可決されましたが、成立によって財政赤字が拡大する恐れもありそれにともない米国財政への信頼性が失われることとなれば、米国債の金利上昇にもつながりかねず世界経済にも影響を及ぼすものと考えられます。
また、3年半が経過したロシア・ウクライナ戦争に関しては、この8月、トランプ大統領がロシア・ウクライナ双方の大統領と会談を行い調停に乗り出し、その後、両首脳による会談を促しておりますが、会談が実現しない場合には重大な局面を迎えるとの警告を発する中、依然として双方の和平要求には隔たりがあり、首脳会談が実現するかどうかも不透明な情勢です。
さらに中国経済情勢を見てみると、米国との関税交渉は依然として決着がついておらず、引き続き米中摩擦、不動産市場の停滞を背景に地方財政の収入不足が深刻化している状況においては輸出増加を重視せざるを得なくなり、それに伴う中国による「デフレ輸出」の動きが一段と加速化すれば世界各国との間で新たな貿易摩擦を生みかねません。
今回も上述の国内の政治・経済の動向、アメリカ、中国、ヨーロッパ情勢を中心にグローバルリスクを念頭におきつつ、将来をいかに展望するかという問題意識のもと、多面的な捉え方が可能となるよう、適時最適任の講師をお招きし、皆様のご要望に沿うテーマ・内容を心掛けた企画・運営を進める所存でございます。何卒多数の皆様のご参加を賜りますようお待ち申し上げる次第でございます。