概 要
ロシア・ウクライナ戦争は、その後の西側先進諸国によるロシアに対する経済制裁がなされながらも、未だ終息の兆しは見えず、それどころかアメリカ、EUなどからウクライナに対して新たな軍備供与が行われ、停戦に向けた動きが一向に見られません。これに対するロシアは、戦略核兵器使用を言及するなど、その深刻化、長期化が一層懸念される事態となっており、その間もエネルギー価格、穀物価格の高騰は続くなど、現在も世界経済には深刻な影響が及んでいるところです。
日本国内においては、長引くコロナ禍にあって、5月8日には感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行が予定されており、今後は徐々にかつての「日常」が戻る期待感も漂い始めています。その一方で、一時151円台を付けるなどした円安の進行により、輸入価格の上昇に伴う国内物価上昇の影響も無視できず、今後も日米の金利差の拡大が想定されるなか、4月にはアベノミクスのもと、異次元の金融緩和政策を約10年にわたって推し進めてきた黒田日銀体制が終焉し、新たに植田和男新総裁が就任します。これにより、いわゆるポスト黒田路線はどこに向かうのか、すなわち、これまで堅持してきた金融緩和の路線を維持していくのか、修正に舵を切るのかにより、日本経済の先行きは大きく異なることになりそうです。また、政治面では4月には統一地方選挙、5月にはG7広島サミットが開催され、統一地方選挙の結果によっては岸田総理の解散・総選挙の時期の判断など今後の政局に影響を与えるものと見られるところです。
世界の政治・経済に目を転じてみれば、米国での昨年の中間選挙では、民主党が想定外に善戦したものの、共和党が下院を制する「ねじれ議会」となっており、経済面では高インフレと高金利は今後も続くとみられ、成長を下支えしてきた消費が弱含みに推移し、景気は後退局面を迎えるという見方もあります。中国経済においても、ゼロコロナ政策の解除を機に、控えてきた消費活動を再開するなど回復局面入りし、経済活動の正常化が進む半面で、不動産市場の低迷など、サービス以外の需要には脆弱さが残るなど、その勢いを削ぐリスクに注意を払う必要あります。欧州では、ウクライナ情勢などに起因する高インフレやエネルギー制約による金融引き締めの影響を受け、その回復は緩慢なものとなる見通しであり、ロシア・ウクライナ戦争に関しては第三の立場をとるインドなどグローバルサウスの動向にも目を離すことはできません。
今回も上述のような国内の政治・経済の諸動向、アメリカ、中国を中心にグローバルリスクを念頭におきつつ、将来をいかに展望するかという問題意識のもと、多面的な捉え方が可能となるよう、適時最適任の講師をお招きし、皆様のご要望に沿うテーマ・内容を心掛けた企画・運営を進める所存でございます。何卒多数の皆様のご参加を賜りますようお待ち申し上げる次第でございます。